年末読んだ本②
■タイラー・コーエン 『大停滞』
これは面白かった。
アメリカ経済は長期的に見て停滞せざるを得ない、ということを論じた本。
その理由を筆者は、 アメリカの経済の繁栄を支えてきた3つの条件が
失われたことに求める。
①無償の土地(先住民から略奪したもの)
②イノベーション(技術革新)
③賢いながらもこれまで教育を受けてこなかった子どもたち
であり、
19世紀末までに①が消滅し、現在は②と③が消滅しつつある(解説 p.151)、
とこの本は論じるわけ。
で、②「イノベーションの枯渇」という部分がとりわけなるほどなあ、と思った。
「イノベーションの枯渇? インターネットがあるじゃん」って反論が
もちろん、出てくるわけだけど、
本書が説得的に語るように、無料のサービスが大半で十分に収益化できておらず、
雇用を生み出せていないんだよね。
車、家電といったアメリカの経済成長を支えてきた過去のイノベーションと
比べればその差は歴然。
ここではわかりやすく、日本を事例に考えてみる。
ネット業界の時価総額の上位企業である
ヤフー、楽天、DeNA、GREE、サイバーエージェント、カカクコム、
ドワンゴ、エムスリーの従業員数を
合計しても、せいぜい10,000名。
日本を代表する製造業トヨタ一社で、
60,000人を超える従業員数がいることを思えば、
どれだけミニマムな産業かわかると思う。
とまあ、本書の議論は極めてパースペクティブが広く、
今後の先進国の経済動向を考える上で、貴重な一冊だと思った。